横須賀鎮守府
「無礼な!!陸軍の佐官風情が、どやどやと乗り込んできて何様のつもりか!陛下の赤子に銃口を向けおって!!」
塚原二四三司令の一喝に、さすがに畑中たちは若干怯む。
それでも、口を開いた。
「恐れながら、お上をはじめ、統帥部首脳を匿っておるのではないですか?いや、この場合は海軍左派が拉致している、
というべきですかな?お上に屈辱的講和を呑ませるために・・・・」
「・・・・自分達のおかれた状況が、まだわからないようだな。・・・・まあ良い、そろそろか・
・・これを聞け!!」
「!?」
塚原はラジオのスイッチを入れた。
『国民の皆様に申し上げます。1時間後、正午に、恐れ多くも天皇陛下御自らの玉音を賜り、
今次大東亜戦争に関する重大な詔勅がありますので、心して拝聴奉るようお願い致します。
そして、一部不心得者の叛乱軍に告ぐ!ただちに武装解除し、投降せよ!』
「これは・・・・米内光政・・・海相の声!?」
「どこだ!?NHKの放送局か!?どこにいようが逃がさんぞ!!」
「何が投降だ!われらだけでなく、他の各部隊も蜂起したら貴様らが勝てるわけないだろ!」
『なお、陛下にあらせられては現在・・・・・・』
次の瞬間、畑中達は耳を疑った・・・・・
真偽を確かめんと、海上を臨める窓辺へと駆け寄る。
「・・・・・・・・・・・!?」
視線のはるか先に、くっきりと、黒い影が浮かんでいた。
圧倒的なる偉容・・・・・黒鋼の城・・・・。
「そんな・・・・そんな馬鹿な・・・・・」
戦艦・・・・・・大和!!
『・・・・畏れ多くもここ、帝國海軍連合艦隊旗艦・大和にご座乗あそばされ、
以後の統帥指導に当られることとなった。つまりこの艦が、現在は大本営である!!』